こんにちは東大阪の税理士事務所 矢野です。
先の参院選で争点が「消費税減税」「国民負担率」など、
物価高に伴い、国民の手取りを上げる政策に注目が集まりました。
これら主張が国民の生活に実質に反映されるのは
いつのことなのか、気になるところです。
本日は、これに少し関係するお話です。
経営者の方でしたら、毎月の社会保険の負担について、
驚かれることは、少なくないかと思います。
社会保険料は、ご存知の通り従業員と折半ですが、
給与の額の概ね30%相当を国に納めます。
会社の負担は給与の額の15%です。
私は、お客様が従業員を採用する際には、
必ずこの点を説明します。
「給与の額とは別に15%相当」を見込んでくだいさいと。
給与の額が20万円でしたら、3万円が会社の負担です。
経営者の方からすると形を変えた税金で、結構な負担です。
この大きな負担をなんとか抑えたいと思うのは
経営者であれば当然です。
今回はこの社会保険料の削減方法について、
実務でよくみられる手法をお話します。
少しの工夫で、社会保険料負担を抑えることができますが、
制度の抜け穴をつくような方法なので、
利用される際には専門家と良くご相談することをおすすめします。
※ ここでは厚生年金と健康保険を前提に解説します。
1.社会保険料の決まり方
まずは、社長も含め社会保険料の算定の仕方を理解してください。
「社会保険料」で検索されると全国健康保険協会のサイトがでてきます。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/
そこから本店所在の都道府県を選択すると保険料額表がてきます。
社会保険料率は、令和7年3月分~は、労使合わせて
健康保険料10.24%(40歳以上は11.83%)、厚生年金保険料率18.3%です。
この表を参照にすれば金額が算定できます。月給と賞与の算定は少し異なります。
(1)月額の社会保険料
月額の社会保険料は、「標準報酬月額」に料率を掛けて計算されます。
それが保険料額表に一覧で掲載されています。
この「標準報酬月額」は、給与の金額に基づきます。
標準報酬月額の具体例を表から3つ挙げます。
給与が、93,000円~101,000円は、98,000円
給与が、290,000円~310,000円は、300,000円
給与が、635,000円~665,000円は、650,000円
このように給与額がどの範囲かで「標準報酬月額」が決まります。
毎月の給与に保険料率を掛けて求めているわけではないで注意です。
例えば給与の額が93,000円でも、100,000円でも
報酬月額が98,000円で、いずれも保険料は同額になります。
実際の保険料は、98000円に上に記載した保険料率を掛けて求めてもいいですし、
表の一覧からも確認できます。
(厚生年金は標準報酬月額65万円までが上限になります。)
(2)賞与の場合の社会保険料
賞与の場合は、月額の金額を参照にするのではく、
賞与額を1000円未満だけ切り捨てて、
先ほどの社会保険料率を掛けて求めます。
2.社会保険を合法的に軽減する方法
(1)役員報酬や従業員様の毎月の給与支給見直しでの節約
先に1.で説明しましたが、社会保険料率を掛ける標準報酬月額は、
給与額に範囲がありました。
これを意識すれば、社会保険の軽減が考えられます。
例えば、給与が、290,000円~310,000円は、標準報酬は300,000円です。
元の給与270,000円の従業員について、20,000円昇給して290,000円に
すれば標準報酬は300,000円です。
これを289,999円で支給を設定すれば、標準報酬月額は、一つ下の金額280,000円になります。
これで標準報酬月額が20,000円下がり、社会保険料が労使で、6,048円(うち会社は3,024円)削減できます。
支給を1円減らすだけで、これだけの差になります。
これだけでは大した差ではないのですが、
12か月分で、従業員の人数分で、今後何年も雇用していくと考えると、
かなりの軽減額になることでしょう。
(2)役員賞与を支給する。
毎月の役員報酬に代えて賞与を支給することで、
社会保険料を節約できます。
賞与を支給した場合には、賞与額の千円未満切り捨てて標準賞与額とし、
社会保険料率を掛けて社会保険料が算出されることを
先ほどご説明しました。
この標準賞与額には、限度額があります。
具体的には、健康保険料は年間573万円、厚生年金は月間150万円です。
仮に賞与を1,000万円支給した場合、健康保険は573万円×10.24%=586,752円と
厚生年金は150万円×18.3%=274,500円(合計:861,252円)までしかかかりません。
これを利用すれば、社会保険の負担を軽減できます。
例えば、ある役員の年間報酬は1,200万円を前提に試算します。
① 毎月100万円で支給した場合
社会保険料の月額は220,282円(保険料月額表を参照)で
12月分で2,643,384円が労使でかかります。
② 月額10万円にし、賞与で一度に1,080万円支給した場合
月額社会保険料28,067円×12月+賞与分861,252円=1,198,056円
→同じ年間報酬総額でも、支給を賞与に傾けるだけで、
労使で、1,445,328円分(①-⓶)削減の計算結果です。
3.問題点や注意点
(1)労使間でしっかり話合う必要。
給与の設定は従業員様がシビアに感じられます。
しっかり説明し、話合いながら進めた方がいいです。
また雇用契約書や就業規則に反していないか確認しましょう。
また、厚生年金の等級が下がれば、将来的に年金支給にも関わりますので、
そのあたりも踏まえて説明が必要です。
(2)役員賞与の支給ルール
① 事前確定届出給与に関する届出書を提出の手間
役員に賞与を支給する場合には、税務署に対し「事前確定届出給与に関する届出」を
一定期限までにあらかじめ提出しておく必要があります。
何もせずに賞与を支給した場合、法人税の計算で賞与自体の損金が認められないので、
注意が必要です。
また、この届出は毎年提出する必要がありますので、その点も注意が必要です。
② 金額の設定次第では逆効果です。しっかり試算が必要。
先ほどの具体例では、削減できる差がでました。
しかし、毎月の80万円×12月と、賞与240万円で1200万円の場合は、
逆に負担があがります。
賞与を支給することで社会保険がかかるタイミングが、12回から13回になります。
限度額を超える部分がしっかり負担軽減になっているか試算が必要です。
4.さいごに
いかがでしたでしょうか。
制度の仕組みを知って、少し工夫すれば社会保険料が削減ができます。
ただし、今回のお話は、先にも触れました制度の抜け穴を利用する性格を持つものです。
将来的には、国側でも対策が立てられると思います。
そういう点では、「違法ではない削減方法」といえます。
当事務所では手法は説明しますが、あまりおすすめはしていないです。
また、「事前確定届給与に関する届出」には、役員賞与として支給する
理由の記載欄まであります。
税務調査で合理的な理由がないような場合でしたら、
賞与の支給自体の損金性を認めないと判断される可能性もあります。
(関西圏では目立った事例は今のところなさそうです。)
なお、今回のお話には他にも問題点がございます。
文面ではなかなか伝えられない箇所もありますので、
ご興味がございまたら是非一度当事務所にお問合せください。
この記事の執筆者:税理士法人やの会計事務所 代表税理士 矢野修平
大阪府東大阪市を拠点に、中小企業の経営支援と節税対策を専門とする税理士です。